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Lord of Magic Championships 2006


ラウンド 3: 高橋純也 vs 清水直樹

Written by Daisuke Kawasaki

さて、時のらせんというセットの一番の売りは、なんといっても「タイムシフト」だろう。

過去の強力カードや有名カードを、全く新しいレアリティとして採録するというコンセプトである「タイムシフト」は、その名の通り、過去のカードが現代に蘇ったというフレーバーが強く、過去の通常の採録カードとはまた違った趣をかもしだしている。

しかし、「タイムシフト」しているのはカードだけではない。

再録カードの中には、ぺプルズ系のデックの根っこである《永劫の輪廻/Enduring Renewal》に代表されるような、過去の強力デックのキーとなるカードが少なくないし、また、時のらせんの新カード自体も、過去のカードをオマージュした物が非常に多い。

そのため、デック自体が「タイムシフト」してくるという現象もおこりうるし、また、時のらせんというセットが構築シーンに投げかけているのも、そういったデックの「タイムシフト」やオマージュというファクターであろう。

さて、ここから長くてくどい解説が始まるので覚悟してもらいたい。

Deck Teck

過去に、「ホワイトトラッシュ」と呼ばれるデックがあった。

アイスエイジブロックが環境の中心の時代に使用されていたデックなので、もう、10 年は前のデックである。もはや、知ってるプレイヤーのほうが少ないかもしれないし、実際に対峙した経験のあるプレイヤーとなると、それはもう、伝説の域に達しているといっても過言ではないだろう。

しかし、デックのコンセプト自体は非常に簡単である。

マナアーティファクトで加速し、《ハルマゲドン/Armageddon》《冬の宝珠/Winter Orb》で相手のマナを拘束し、《氷の干渉器/Icy Manipulator》《神の怒り/Wrath of God》《解呪/Disenchant》《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で相手のパーマネントをコントロールする。端的に言えば、ボードコントロールデックのハシリであり、現在で言えばアネックスファイアあたりがその流れを汲むデックであると言えるだろう。

勝ち手段は、基本的には《吠えたける鉱山/Howling Mine》《石臼/Millstone》によるライブラリーアウトであるが、《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》《Kjeldoran Outpost》というカウンターされない土地をダメージソースとするバリエーションも少なくなくみられた。

実際、最初に「ホワイトトラッシュ」の名を冠したバージョンのデックも、《Kjeldoran Outpost》に防御・攻撃ともに拠っているデックであった。

当時のコントロールデックといえば、カウンターポストやプリズンのように青白が基本であった。白単色にすることで、スペルへの耐性が下がり、ドローサポートが減るかわりに、パーマネントコントロール能力が大幅に向上する。また、当時猛威を振るっていた《露天鉱床/Strip Mine》によって、マナ基盤を攻撃されないのもメリットだったのかもしれない。

当時は、その弱点であるスペルへの耐性の低下とアドバンテージ能力の低下を、《冬の宝珠/Winter Orb》《ハルマゲドン/Armageddon》によるマナ拘束戦略がカバーする事が可能であり、だからこそ成立したデックでもあった。

現在でも、「タイムシフト」で《解呪/Disenchant》が復活したことで、パーマネントコントロールに関しては、白は当時とほぼ変わらない力を得たといえるが、このマナ拘束戦略が白の領分ではなくなってしまったが故に、やはり白単色でのボードコントロールを成立させるのは難しいと思われた。

しかし、この難問に挑む男がいた。

高橋純也である。

Sacred Mesa

彼の構築したホワイトトラッシュは純粋な白単色のボードコントロールデックである。

もはやお馴染みの《占術の岩床/Scrying Sheets》によるアドバンテージエンジンをつみつつ、時のらせんの注目カードのひとつである《魔力の篭手/Gauntlet of Power》でマナを加速し、強化された《聖なるメサ/Sacred Mesa》のトークンで場を支配する。

マナ拘束によるスペル耐性こそないものの、その分、パーマネントコントロールとボードコントロールに特化したデザインとなっている。

おそらく、時のらせん導入によって、スペル中心ではなく、パーマネント中心の環境になるとメタゲームを読んだ上での選択であろう。

高橋のデックには、パーマネント中心、つまりビートダウン中心の環境ならではの強力なギミックも導入されていると言う事だが、それについてはデュエルの中で見ていこうと思う。

ちなみに、高橋といえば、赤緑に代表されるビートダウン系のデックの使い手として知られているが……。

高橋:いや、この環境、みんな“ラッシュ”だと思うので、自分からメタってみました。

そう、今日の高橋は、"ラッシュ"ではなく「ホワイト“ラッシュ”」なのである。


さて、ホワイトトラッシュから、さらに時代が下って、ミラージュの時代。

この時代、コントロール・ビートダウンを問わず緑系のデックを支えていた 1 枚のカードがあった。

その名は《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》

《森/Forest》を戻してクリーチャーをアンタップするというその能力は、見た目のシンプルさからは想像できないほどに汎用性が高く、結果多くのデックを創造していった。

《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》をアンタップしつつ、土地を置いてマナ加速をしたり、アンタップに制限をもつ《Spectral Bears》をアンタップする事でデメリットを軽減し強力なビートダウンを実現したりと、縦横無尽の活躍をし、当時の緑カードの代名詞とまで言われていた。最近のカードで言えば、《永遠の証人/Eternal Witness》くらいに代名詞であったといえば、何となくニュアンスが伝わるような伝わらないような、それくらいに使用頻度が高いカードであった。

そして、唐突に話は青緑に飛ぶ。

現在でこそ、青緑というカラーコンビネーションは一般的なコンビネーションとして認識され、特にクロックパーミッションでその真価を発揮している事でおなじみではあるが、昔、それこそアイスエイジの時代ですらないくらいの大昔においては、青緑は最弱の色の組み合わせと考えられていた。どれぐらい青緑が弱いと考えられていたかというと、青緑の「元祖」デュアルランドである《Tropical Island》が他のデュアルランドに比べてワンランク安い値段がついていたくらいである。

そんな、青緑不毛の時代に活躍した数少ないデックのひとつに「グランビル」というデックがある。

単純にいえば、青と緑の回避能力をもったクリーチャーを強化し、クロックを与え続けるというクロックパーミッションなのだが、青い火力《心霊破/Psionic Blast》、青い軽量強化《不安定性突然変異/Unstable Mutation》、青い軽量飛行クリーチャー《空飛ぶ男/Flying Men》といった、今の常識でいえばかなりイレギュラーなカードによって成立している、「カラーパイの整理以前」の鬼子のようなデックであった。

しかし、今回「タイムシフト」として、上にあげた 3 枚のカードがすべてスタンダードに戻ってきてしまったのである。

《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》亡き後、低迷すると考えられていた青緑のクロックパーミッションだが、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》無き時代のデックが「タイムシフト」してくる可能性がでてきた事により、俄然メタの中心と考えられるようになった。

さて、このデックにおいて、イレギュラーだったのは青のカードだけか?

否。

緑からもイレギュラーなカードが採用されていた。その名は《スクリブ・スプライト/Scryb Sprites》。飛行を嫌う緑としてはありえない、1 マナ 1/1 の飛行クリーチャーである。

そして、時のらせんにおいて、ここであげた 2 枚の緑のカード、《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》《スクリブ・スプライト/Scryb Sprites》を共にオマージュし、コラボレーションしたようなカードが登場した。

Scryb Ranger

《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》である。名前もまさにそのまま。

この、緑の歴史を担ったカードに魅せられた男がいる。

清水直樹、今年の日本選手権シーズンをにぎわせた立役者のひとりであり、新進気鋭のデックビルダーとしても認知されている男である。

「青ければなんでもいいんですよ」と天才のにおいを感じる清水節を披露しつつ、清水が披露したデックは、青緑のクロックパーミッションである。

前述のマナクリーチャーと《レインジャー/Ranger》による相互作用でマナを加速させつつ、回避能力をもつ《スクリブ/Scryb》を《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》で強化し一気に殴りきるという、まさに緑の歴史がつまったデックコンセプト。当然、《幽体の魔力/Spectral Force》もアンタップして殴ってくるというおまけつきである。

そんな清水に、今大会への意気込みを聞いてみたところ、1 枚の青いハンカチを取り出した。

清水:このハンカチで汗ふくと勝てるんですよ。日本選手権もそうでしたし。


非常にロジカルなプレイヤーと思われた清水もジンクスを大事にするタイプのプレイヤーであるようだ。

ビートダウンプレイヤーとしての自身を真っ白に塗り替えた「ホワイトラッシュ」高橋と、実は意外とジンクス系のプレイヤーであった「マジック界のハンカチ王子」清水の熱戦。繰り広げられる華麗な美技に酔いしれよう。

Game 1

高橋純也

先攻は高橋。

1 ターン目に《平地/Plains》からの《砂の殉教者/Martyr of Sands》のスタート。スタンダードはもちろん、ドラフトでもなかなか見ないクリーチャーである。その後も平地を並べつつ、《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》を展開と、順調にマナを伸ばしていく。

一方の清水は、初手に 1 枚の《繁殖池/Breeding Pool》から続く土地をひけないものの、そこは土地の枚数が 1 桁だった時代の緑デックの流れを汲むデック、1 ターン目に《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》、続いて《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》とひいた土地の枚数からは信じられないようなマナ加速をみせる。

そして、マナが加速するふたりの前に《吠えたける鉱山/Howling Mine》が 1 枚、また 1 枚と登場し、今度はドローも加速していく。

マナもドローも加速している状態で場が加速しない理由はない。

清水は、《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》とそれぞれ 2 体目を追加し、攻撃の手を緩めない。

しかし、高橋のデックは、ビートダウンをメタに据えたデックである。この展開は想定の範囲内だ。

まずは、《砂の殉教者/Martyr of Sands》の能力で、3 枚の手札すべてを占める白カードを公開し、9 ライフゲイン。そして、公開されたカードの中には《再誕の宣言/Proclamation of Rebirth》が。

続くアップキープに、予見で使用される《再誕の宣言/Proclamation of Rebirth》

もはや、永遠ともいえるライフゲインエンジンを前に頭を抱える清水に、高橋が一言。

高橋:削りきれないと思うよ。

高橋 1-0 清水

Game 2

清水直樹

お互いに、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》でマナを加速する展開。

しかし、清水の手札には後続のクリーチャーは無く、スペルばかり。場では《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》がひとり寂しくビートダウンを続けている。清水には、他に対象を持たない《心霊破/Psionic Blast》を本体に向かってうつ事くらいしかできない。

非常に嫌な展開だ。清水は手ににじむ汗を、ハンカチでぬぐう。

しかし、というか、ハンカチのおかげというか、展開が清水に味方した。

高橋のキャストした《物語の円/Story Circle》を、まずは《差し戻し/Remand》、そして優先権を与えない状態で、刹那の《クローサの掌握/Krosan Grip》で破壊。

続くターンの《魔力の篭手/Gauntlet of Power》を、またも《差し戻し/Remand》すると、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》。とどめに本体に《心霊破/Psionic Blast》をうつ。

高橋のライフは、1 体の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》に削りきられてしまったのだ。

高橋 1-1 清水

Game 3

Krosan Grip

1 ターン目のマナクリーチャーから 2 ターン目に清水が場にだしたのは、サイドから投入された《三角エイの捕食者/Trygon Predator》

アーティファクトを中心とする高橋のデックにとっては、天敵ともいえるクリーチャーだ。

これは除去しなければ、デックが全く動かないといっても過言ではない高橋、一度は《差し戻し/Remand》されるものの、なんとか《神の怒り/Wrath of God》で場を一掃することに成功する。

しかし、そこにスタックして《極楽鳥/Birds of Paradise》から青マナを出した清水は、《粘体マンタ/Plaxmanta》を場にだし、攻撃の手を緩めない。

《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》《神秘の蛇/Mystic Snake》とクロックを追加しつつ、自身の優位を掌握しつづける。

最後の抵抗とばかりに、《物語の円/Story Circle》を場にだしたその刹那、高橋を握りつぶすかのような《クローサの掌握/Krosan Grip》

高橋 1-2 清水

高橋:相性は悪くないんですけど……《砂の殉教者/Martyr of Sands》ひかないとやはり辛いですね……。

Winner is 清水直樹 !

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