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Lord of Magic Championships 2006


準々決勝: 栗原伸豪 vs 浅原晃

Written by Daisuke Kawasaki

二日間にわたって行われた Load of Magic もついに予選ラウンドを終え、決勝ラウンドへと突入した。

新鋭・古豪揃って並ぶトップ 8 の顔ぶれを見れば、この大会が「関東最強を決める大会」であることに意義を唱える人間もいないであろう。

激戦を乗り越えてきた 8 人と、新環境を彩る 8 枚のデックリスト。どの対戦も遜色なく素晴らしいカードではあるが、どれかひとつ「ベストマッチ」を選べといわれたら、筆者は独断と偏見でこのマッチを選びたいと思うし、だからこそこのマッチのカバレッジをとることにした。

まずは、プレイヤー

浅原晃

浅原晃のプロフィールについて今更新しく述べるべきことがあるだろうか?

よく「トップ 8 プロフィール」に自ら書き込む、カメレオンクラブ杯や玄人杯からはじまり、グランプリや Finals では、ともに 2 回の優勝経験を持ち、世界選手権トップ 4 の肩書きを持つ、問答無用のトッププレイヤーである。

筆者の知る限りで、浅原が成績を残せていないトーナメントは、今はなき八王子杯や Magic Fortune 杯ぐらいではないだろうか。

また、おなじみ荒堀和明の GP 仙台優勝の影の功労者として、また、プレミアイベントごとに「浅原のデック」としか言いようのないデックを持ち込んでくるデックビルダーとしての名声についても、また説明は不要であろう。

名実共に、日本を代表するプレイヤーのひとりである浅原であるが、実は、LoM には、かなり初期から参加している。だが、いまだ優勝経験はない。

一方の栗原だが、もはや「新鋭」だの「 PT チャールストン」といった言葉を代名詞的に使用するのもはばかれるほどに、安定した成績をみせるプレイヤーとなった。

派手さは無いものの、堅実で着実なプレイングスタイルは、確かな実力を感じさせてくれる。

続いて、デック

浅原のデックは、Round 11 でも紹介した「神砂嵐」ドラゴンストームである。浅原自身も調整不足を認めるデックではあるが、やはりコンセプトやカードの持つポテンシャルは高く、Round 12 をなんとか勝利し、Opp 差を制して決勝へと浅原を導いた。

新環境を代表するコンボデックであり、まだまだ改良の余地が十分にあることから、今後更なる強化が見込まれる注目のデックタイプである。

Kami-Suna-Arashi - Asahara Akira / Lord of Magic Championships 2006
 4  ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite
 3  大いなるガルガドン/Greater Gargadon
 1  狩り立てられたドラゴン/Hunted Dragon
 1  火想者ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, the Firemind

9 Creatures 4 睡蓮の花/Lotus Bloom 3 彩色の星/Chromatic Star 4 ドラゴンの嵐/Dragonstorm 4 炎の儀式/Rite of Flame 4 祖先の幻視/Ancestral Vision 4 煮えたぎる歌/Seething Song 3 差し戻し/Remand 3 時計回し/Clockspinning
29 Spells 3 島/Island 3 山/Mountain 4 蒸気孔/Steam Vents 2 聖なる鋳造所/Sacred Foundry 2 神聖なる泉/Hallowed Fountain 4 シヴの浅瀬/Shivan Reef 4 トロウケアの敷石/Flagstones of Trokair
22 Land 60 Total Cards
 4  巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge
 3  ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir
 2  稲妻の天使/Lightning Angel
 1  大いなるガルガドン/Greater Gargadon
 4  均衡の復元/Restore Balance
 1  時計回し/Clockspinning

15 Sideboard Cards

一方で、栗原のデックは、「本人のオリジナルのデック」ではあるものの、デックの内容としては、Round 1 で有留が使用していた「赤青型の」ヤソコンである。

今大会に八十岡が持ち込んだデックは全部で 3 つあり、北山が使用した白緑青のマナ加速とドロー加速の後に《秘教の処罰者/Mystic Enforcer》が登場するボードコントロールバージョンと、八十岡本人曰く「原点回帰」という黒緑青の《神秘の蛇/Mystic Snake》《熟慮/Think Twice》を入れたパーミッション、そして、最後がこの赤青氷雪タイプである。

ちなみに、黒緑青が原点回帰であるのは、八十岡のヤソコンがはじめて表舞台に登場した「カウンターモンガー」と同じ色だからだそうだ。

栗原が使用するタイプのデックの特徴は、氷雪というコンセプトを《占術の岩床/Scrying Sheets》と冠雪土地や《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》によるアドバンテージエンジンだけでなく、フィニッシャーの《霧氷羽の梟/Rimefeather Owl》や、軽量除去の《雪崩し/Skred》でも活用しているところにある。

また、時のらせんからは、《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》がそのカードパワーを認められ、採用されている。

Gargadon Deck Wins - Kurihara Shingou / Lord of Magic Championships 2006
 4  ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot
 3  ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir
 1  吸収するウェルク/Draining Whelk
 1  霧氷羽の梟/Rimefeather Owl

9 Creatures 3 巻き直し/Rewind 3 呪文嵌め/Spell Snare 4 取り消し/Cancel 4 ルーンのほつれ/Rune Snag 4 熟慮/Think Twice 1 入念な考慮/Careful Consideration 3 撤廃/Repeal 4 雪崩し/Skred
26 Spells 13 冠雪の島/Snow-Covered Island 4 冠雪の山/Snow-Covered Mountain 4 蒸気孔/Steam Vents 4 占術の岩床/Scrying Sheets
25 Land 60 Total Cards
 4  紅蓮地獄/Pyroclasm
 2  交錯の混乱/Muddle the Mixture
 1  万の眠り/Gigadrowse
 1  反復/Reiterate
 1  呪文嵌め/Spell Snare
 4  大いなるガルガドン/Greater Gargadon
 1  運命の盗人/Fortune Thief
 1  ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir

15 Sideboard Cards

デックもプレイヤーも、魅力十分のこの対決を制するのはどちらか。

Game 1

栗原伸豪

さて、前述のように、浅原のデックは、もはや浅原の代名詞といってもいい「大ぶりなコンボデック」である。このタイプのデックの一般的な特徴として、パーミッションに弱いというのが挙げられるだろう。

そして、栗原のデックはパーミッションなのである。

デック相性としては、完全に栗原に分があると言えるだろう。《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》自体はストームを持ち、それ自体はカウンターに耐性を持つとはいえ、そこに至るマナ加速をカウンターされる展開になると浅原はかなり厳しい。

また、浅原のデックは、待機を多用しているデックであり、メインから《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を採用する栗原のデックは、むしろ完全なアンチデックといってもいいぐらいなのだ。

しかし、プレイヤーは浅原である。

「歴伝」を持ち込んだ世界選手権の準々決勝、圧倒的不利といわれた青黒《呪師の弟子/Jushi Apprentice》コントロールとの対戦を制した実績がある。おもえば、この《呪師の弟子/Jushi Apprentice》コントロールはもともとはヤソコンと呼ばれていたデックだ。

相性差をひっくり返すような勝負強さがやはり浅原にはある。


先手は栗原。

浅原が第 1 ターンに《睡蓮の花/Lotus Bloom》からスタートできなかったので、栗原は、3 ターン目に安心して《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》をキャスト。ビートダウンを開始する。

手札が芳しくない浅原は、2 枚の《彩色の星/Chromatic Star》を経由して、3 ターン目に《祖先の幻視/Ancestral Vision》をやっとこさ待機させる。続いて《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を待機。非常に悠長な展開である。

Teferi, Mage of Zhalfir

そんな悠長な浅原に対して、栗原がキャストしたのは、浅原のデックに致命的な弱点を与える《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》。すでに 2 枚のカードを待機させている浅原は、これを 2 度にわたり《差し戻し/Remand》するものの、最終的には場に登場してしまうことを許してしまう。

秘密兵器である《時計回し/Clockspinning》によって、無理矢理《祖先の幻視/Ancestral Vision》でのドローは成功させた浅原ではあったが、《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》に続いて、《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》まで加わった 6 点のクロックを前に、ライフは 2 となり、カウンターの警戒などと言ってられない状態で動くしかなくなる。

まずは、《炎の儀式/Rite of Flame》

ここで、浅原は、すべての土地からマナを引き出すと、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》の能力でサクリファイスし、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を待機状態からキャストしようと試みる。

しかし、《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》の能力が禁じているのは、「アップキープでの待機状態からのキャスト」ではなく、「待機状態が終了する効果の最中のスペルのキャスト」であるため、メインフェイズでのキャストであっても、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》はキャストする事が出来ない。

改めてこの事を確認すると、しかたなく、浅原はストーム 1 で《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》をキャストする。これがコピーともども通り、浅原の場には 2 体の《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が登場、栗原に 10 点のダメージを与える。

栗原の場のクリーチャーは、両方とも飛行を持たないため、このままならば、次のターンに浅原が勝利する事となる。

しかし、カウンターを持った栗原が《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を通したのだから、このままなわけがない。

浅原のエンドターンに登場する《霧氷羽の梟/Rimefeather Owl》

浅原:《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》が出せなければ勝ちはなかったので、ダメ元でやってみたんですけど、やっぱダメでしたね。

栗原 1-0 浅原

Game 2

圧倒的な相性差のこのマッチ。

しかし、圧倒的に不利であるということがわかりきっている以上、浅原がなんの対策もこうじていないわけがない。サイドボード構築の際、カウンターに気を取られて、ビートダウン対策を怠ってしまったくらいである。

先攻は浅原。

ここで、今度は栗原が 2 ターン目に浅原のお株を奪う形で《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を待機させる。

だが、お株を奪ったのは、栗原だけではなかった。

栗原が浅原のターンエンドに、《占術の岩床/Scrying Sheets》の起動から《熟慮/Think Twice》のキャストでタップアウトした隙に浅原がキャストしたのは、待機殺しであると同時に、カウンター殺しでもある《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》

自身のターンにこのクリーチャーをなんとも出来なかった栗原には、浅原が《炎の儀式/Rite of Flame》《煮えたぎる歌/Seething Song》と繋いで、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》をキャストするのを指をくわえてみている事しか出来なかった。

栗原:2 本目は、さすがに適当にやりすぎましたね……。

栗原 1-1 浅原

Game 3

お互いがお互いの本領を発揮して、全力でぶつかりあったこのマッチもついに最終戦。

相性差を活かし、栗原が勝利するか。

それとも、浅原が持ち前の勝負強さを発揮するのか。

1 ターン目に浅原が《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機させ、2・3 ターンと連続で《トロウケアの敷石/Flagstones of Trokair》をセットする事で《神聖なる泉/Hallowed Fountain》を 2 枚導き、色マナを安定させる。一方で、栗原も 2、3 ターンと連続で《熟慮/Think Twice》をキャスト。手札を充実させる。

そして、浅原の《祖先の幻視/Ancestral Vision》の待機か解除される 5 ターン目。この《祖先の幻視/Ancestral Vision》《巻き直し/Rewind》でカウンターされるが、浅原は《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》をキャストし、ビートダウンを開始する。

しかし、栗原もそのターンのエンドにまたも《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》をキャストし、次のターンからクロックをかけはじめる。

一見、3 点と 4 点で浅原が有利なダメージレースに見えるのだが、しかし、栗原は豊富なドローソースでクリーチャーを引き当てれば、いつでも《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》のブロッカーを、しかも浅原のアタックにあわせて場に用意することが出来るのである。基本的に場のコントロールの手綱を握っているのは、栗原である。


はずなのだが。

何度《占術の岩床/Scrying Sheets》を起動しても、手札に入るのは土地ばかり。それによって、刷新されたはずのライブラリートップにもクリーチャーの姿は無い。ライフ 4 まで削られてしまった栗原は《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》のブロッカーに回さざるを得なくなってしまう。

ここで、浅原が、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を手札からキャストするが、さすがにこれは《ルーンのほつれ/Rune Snag》。栗原も土地ばかりをひいているわけではなく、2 枚の確定カウンターによって手札は充実している。

浅原の《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》と相打ちし、浅原は枷が外される一方で、クロックを失う事となる。

一方の栗原は、マナも十分にあり、なにかクリーチャーさえひけば、カウンターを構えたまま、浅原に対するクロックを用意することが可能なのだ。浅原のライフもすでに5しかないのだ。

栗原が圧倒的優位の場である。

Bogardan Hellkite

しかし、浅原の手札には、まだ、2 体の《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が眠っていた。すでに浅原は 3 枚の《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をひいていることになる。

この、普通に考えれば不幸な出来事が、このときばかりは浅原に優位に働く。

まず、栗原のアップキープに《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をキャスト。これは《取り消し/Cancel》でカウンターする栗原。しかし、なおも続いて場に出てくる《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》、そして《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》

その全てをカウンターし、なんとか浅原の猛攻を凌ぎつつ、ライブラリーを掘り続ける栗原。ここで、やっと念願のアタッカーである《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》をドローする。十分なマナがあることを確認すると、これをキャストする。

この返しのターンのアップキープに、待機していた浅原の《祖先の幻視/Ancestral Vision》がキャストされる。これはカウンターしない栗原。浅原は意を決して、すべてのマナをタップして、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》をストーム 1 でキャストする。

浅原のデックには、すでに《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》は 1 枚しかないのだが、この 2 つの《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》のうち、どちらかさえ通れば、栗原のライフを削りきる事が出来るのだ。

だが、《占術の岩床/Scrying Sheets》《熟慮/Think Twice》《入念な考慮/Careful Consideration》によって、平均 2 枚から 3 枚ライブラリーを掘り進め、手札を充実させていた栗原は、《取り消し/Cancel》《交錯の混乱/Muddle the Mixture》でどちらも処理することに成功する。

《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》がアタックして、浅原のライフは 2。次のターンを凌ぎきれば、栗原の勝利である。

ここまで大技を連発してきた浅原なのだが、この肝心な場面でガス欠しないあたりが、浅原の勝負強さである。

浅原は、最後のチャンスとばかりに、《煮えたぎる歌/Seething Song》を経由し、またもストーム 1 での《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》をキャストした。

しかし、栗原の手札には、4 枚のカウンターと、それを唱えるのに十分なマナがあったのだった。

……そう、4 枚の《呪文嵌め/Spell Snare》が。

栗原 1-2 浅原


浅原:最後はただのヘルカイト好きのおっさんみたいでしたね。

たしかに、綺麗にコンボがきまって勝利、とはいかなかったし、結論から言えば栗原が不運なドローに助けられただけだったのかもしれない。

だが、なりふり構わず勝利に向かって諦めない浅原のプレイスタイルこそ、浅原の勝利の原動力である事は間違いないだろう。

Winner is 浅原晃! 準決勝進出!

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